日中はまだ30度近い残暑なのに、夕方からは急に涼しくなる。そこへ立て続けに台風が近づいて、頭が重い、めまいがする、体がだるくて寝つけない——。9月に入ってから、こうしたお悩みでご来院される40代の女性が本当に増えています。「夏の間、冷房の効いたオフィスでずっと過ごして、なんとなく疲れが抜けないまま秋の繁忙期に入ってしまった」「週末に寝だめしても、月曜にはもうしんどい」。そんな「休んでも回復しない」感覚は、あなたの気合いが足りないからではありません。体が季節の変化についていけていないサインです。
寒暖差と低気圧で自律神経が乱れる理由|夏の疲れが抜けない体

私たちの体は、外の気温が変わっても体温を一定に保つよう働いています。この体温調節を担っているのが自律神経です。血管を締めたり広げたり、汗を出したり止めたり——無意識のうちに、休みなく調整を続けてくれています。
ところが9月は、朝晩と日中の気温差が10度近くになる日も珍しくありません。さらに台風が近づくと気圧が急激に下がり、内耳(耳の奥の気圧センサー)がその変化を感知して、自律神経にさらなる指令を送ります。寒暖差と低気圧、二重の負担がかかるのが、まさにこの時期なのです。めまいやだるさ、頭の重さは、この調整作業に体が疲れきっているあらわれと考えられます。
東洋医学では、この状態を「気(き)の巡りの滞り」としてとらえます。夏の間、冷房の効いた室内で体を冷やし続けると、お腹まわりの「脾(ひ)」——消化吸収とエネルギー生成を担う働き——が弱まります。冷たい飲み物、シャワーだけの入浴、湯船に浸からない習慣。これらが積み重なると、体を温めるエネルギーそのものが不足したまま秋を迎えることになります。だから休んでも回復しないのです。回復に使う燃料が足りていない状態、と言い換えられるかもしれません。
ご自宅でできるケアとしては、へそから指4本分ほど下にある「関元(かんげん)」というツボを、手のひらでゆっくり温めるのがおすすめです。カイロや湯たんぽを当てるだけでも構いません。夏に冷えた体の芯に、そっと熱を戻していくイメージで行ってみてください。
「休んでも回復しない」秋の睡眠を整える東洋医学のケア

秋の睡眠の悩みには、いくつか特徴があります。「布団に入っても頭が冴えて寝つけない」「夜中に何度も目が覚める」「朝起きた瞬間から疲れている」。夏の間は暑さで眠れなかったのに、涼しくなったのに眠れない——これは体の切り替えが追いついていないためです。
自律神経には、活動モードの交感神経とお休みモードの副交感神経があります。本来は夜になるにつれて副交感神経が優位になり、自然と眠りに入っていきます。しかし寒暖差や気圧変化で交感神経が働きすぎていると、夜になってもブレーキがかかりません。加えて秋の繁忙期で仕事のストレスが重なると、体は「まだ戦う時間だ」と勘違いしたままになってしまいます。
東洋医学では、こうした状態に「肝(かん)」の高ぶりが関わると考えます。肝は気の巡りを司り、ストレスの影響を受けやすい存在。肝が高ぶると、目の奥の疲れ、こめかみの緊張、食いしばりや歯ぎしり、そしてイライラや寝つきの悪さとして現れます。実は私自身も以前、自律神経の乱れと不眠に長く悩み、鍼灸に助けられた経験があります。あのときの「眠りたいのに眠れない焦り」は、今でもよく覚えています。
就寝前のケアとしては、手首の内側、小指側のくぼみにある「神門(しんもん)」を、反対の親指でゆっくり10秒ほど押してみてください。呼吸を止めず、息を吐きながら圧をかけるのがポイントです。また足の裏、土踏まずのやや上を手でもみほぐすと、上に上がった気が下に降りて、眠りに入りやすくなる感覚が得られる方も多くいらっしゃいます。秋の睡眠は「頭を冷やして足を温める」——これを合言葉にしてみてください。
秋の繁忙期を乗り切る体づくり|未病治という考え方
当院が大切にしているのは「未病治(みびょうち)」という東洋医学の考え方です。病名がつくほどではないけれど、確かに不調がある。検査では異常なしと言われるけれど、本人はつらい。この「未病」の段階でこそ、体は最も応えてくれます。
寒暖差や低気圧による不調は、天気そのものを変えることはできません。けれど、変化に振り回されにくい体をつくることはできます。鍼灸は、こわばった筋肉をゆるめ、滞った血流や気の巡りをうながし、自律神経のバランスを整えるサポートとして活用されてきました。お灸は夏に冷えた体の芯を温め、整体は寒暖差で縮こまった首肩や背中の緊張をほどきます。当院ではこの三つを、その日のお体の状態に合わせてオーダーメイドで組み合わせています。
日常のなかで意識していただきたいのは三つです。ひとつ目は、湯船に10分以上浸かること。汗をかくことで体温調節の機能が働きやすくなります。ふたつ目は、朝食に温かいものを一品入れること。味噌汁やスープで「脾」を助けます。三つ目は、朝起きて5分でもカーテンを開けて光を浴びること。体内時計が整い、夜の眠りにつながります。
そして何より、「がんばれば回復する」という思い込みを一度おろしてみること。休んでも回復しないのは、休み方が足りないのではなく、回復する土台が整っていないから。土台づくりに、外からの手を借りていただいて構わないのです。
この記事を書いた人

成谷茂樹(なりや しげき)
はり師・きゅう師・柔道整復師(いずれも国家資格)
はり処 悠禅 院長。自身も自律神経の乱れと不眠を鍼灸で改善した経験から、お一人おひとりに寄り添うオーダーメイド施術を行っています。
まとめ
9月の寒暖差と低気圧は、自律神経に二重の負担をかけます。冷房で冷えた夏の疲れが残ったままだと、休んでも回復しにくい状態に。関元や神門のツボケア、湯船、温かい朝食を取り入れながら、未病の段階で体を整えていきましょう。
はり処 悠禅はJR高円寺駅から徒歩1分、夜22時まで営業の完全予約制・完全個室の鍼灸院です。お仕事帰りにも立ち寄っていただけます。お子様連れも歓迎しております。「この症状で行っていいのかな」という段階でも大丈夫です。秋の繁忙期を少しでも軽やかに過ごすために、まずはお気軽にご相談ください。



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