夏休みが明けて仕事量が一気に戻り、下期の準備で資料作成やデータ整理に追われる9月。夕方になると目の奥がズンと痛み、こめかみから側頭部まで張ってくる——そんな状態で一日を終えていませんか。冷房の風で目が乾き、コンタクトがつらい。移動中や寝る前のスマホで、目が休まる時間がほとんどない。「疲れ目くらい」と後回しにされがちですが、東洋医学ではこうしたサインを、体からの早めのお知らせと考えます。今回は眼精疲労を、目そのものだけでなく首肩や側頭部から見直す視点をお伝えします。
目の奥の痛みは「目」だけの問題ではありません

「目の奥の痛み」を訴える方の首肩に触れると、多くの場合、後頭部の付け根から肩上部までがカチカチに固まっています。PC画面を見続けるデスクワークでは、頭が前に出た姿勢が長時間続き、首の後ろの筋肉が頭を支えっぱなしになります。この首の緊張は後頭部から側頭部へと連なり、結果として側頭部の張りやこめかみの重さ、目の奥の圧迫感として感じられることがあります。
東洋医学では、目は「肝(かん)」と深い関わりがあると考えます。肝は血を蓄え、全身に巡らせる働きを担うとされ、目を使いすぎることで肝の血が消耗し、目の乾きやかすみ、疲れとして現れると捉えます。また、頭の側面には「胆経(たんけい)」という経絡が通っており、ここが滞るとこめかみの張りや偏頭痛のような症状につながりやすいとされています。つまり目・側頭部・首肩は一本の流れとしてつながっているのです。
さらに、目のピント調節は自律神経が担っています。近距離を見続けると調節に関わる筋肉が緊張し続け、交感神経が優位な状態が続きます。すると夜になっても頭が冴えて眠りが浅くなり、翌朝も疲れが残る——この循環に入る前の段階が、東洋医学でいう未病(みびょう)です。検査では異常がないけれど不調がある、そんな時期にこそ整えておきたいのです。
冷房とコンタクト、スマホ時間が重なる9月の目

9月は、体にとって意外に負担の大きい時期です。オフィスの冷房はまだ効いており、風が直接当たる席では涙の膜が乾きやすくなります。ドライアイ気味の目でコンタクトレンズを長時間つけていると、まばたきのたびに違和感が出て、無意識に目を細めたり眉間に力を入れたりします。この小さな力みが積み重なり、眉の上・こめかみ・後頭部の緊張へと広がっていきます。
加えて、まばたきの回数の問題があります。集中してPC画面を見ているとき、まばたきは通常の半分以下に減ると言われます。スマホを見る時間が増えれば、目が休息する時間はさらに削られます。東洋医学では、体を潤す「陰(いん)」の力が不足すると、目や喉、肌の乾きが出やすいと考えます。夏の暑さで汗をかき、冷たい飲み物で胃腸が弱っていると、この潤いを作る力そのものが落ちている状態。目の乾きは、全身の潤い不足のサインでもあるのです。
ご自宅でできるケアとしては、まず「太陽(たいよう)」——こめかみのくぼみを、指の腹でゆっくり円を描くように。次に眉頭の内側のくぼみ「攅竹(さんちく)」を、下から支えるように優しく。首の後ろ、髪の生え際の外側にある「風池(ふうち)」は、後頭部を包み込むように親指を当てて呼吸に合わせてゆるめます。強く押す必要はありません。じんわり温かさを感じる程度で十分です。冷房の風向きを変える、1時間ごとに20秒だけ窓の外を見る、そんな小さな習慣も目を休ませる助けになります。
首肩・側頭部からゆるめる東洋医学のアプローチ
眼精疲労に対する鍼灸では、目の周りだけを狙うのではなく、首の後ろ、肩上部、側頭部、そして背中まで含めて全体の緊張を見ていきます。首肩の深い部分がゆるむと、頭部への血流が巡りやすくなり、こめかみの張りや目の奥の重さが変化していくケースがあります。当院でも、お灸で首肩を温めながら鍼で緊張をゆるめ、必要に応じて整体で姿勢のクセを調整する——というオーダーメイドの組み合わせでアプローチしています。
また、目の使いすぎで交感神経が緊張し続けている方には、自律神経の調整を意識したツボも合わせて用います。手足のツボを使いながら全身の巡りを整えると、施術中に眠ってしまう方も少なくありません。眠れるということは、体が緩む準備ができたサイン。私自身、以前は自律神経失調症と不眠に悩み、鍼灸に助けられた経験があります。だからこそ「目が疲れているだけ」と我慢してしまう気持ちも、そこから先の不調につながっていく流れも、実感を持って受け止められると思っています。
大切なのは、症状が固定してしまう前に手を打つこと。まさに未病治の考え方です。下期が本格的に動き出す前のこの時期に一度リセットしておくと、その後の数か月の過ごしやすさが変わってきます。
この記事を書いた人

成谷茂樹(なりや しげき)
はり師・きゅう師・柔道整復師(いずれも国家資格)
はり処 悠禅 院長。自身も自律神経の乱れと不眠を鍼灸で改善した経験から、お一人おひとりに寄り添うオーダーメイド施術を行っています。
まとめ
目の奥の痛みやこめかみの張りは、目だけでなく首肩・側頭部の緊張、そして自律神経の乱れと関わっています。冷房・コンタクト・スマホが重なる9月は特に負担が集中する時期。ツボのセルフケアと環境の見直しに加え、体全体から整えていく視点を持つことが、目を休ませる近道になります。
はり処 悠禅は高円寺駅から徒歩1分、完全個室・完全予約制で22時まで営業しております。お仕事帰りにも立ち寄っていただけますので、目の疲れや首肩のこわばりが気になる方は、まずはお気軽にご相談ください。



コメント