「ようやく涼しくなったから、久しぶりにゴルフに行った」「朝のウォーキングを再開した」——そんな9月、翌日から腰が重だるく、椅子から立ち上がるときに「うっ」と声が出る。強い痛みというほどではないけれど、常に腰に板が張りついているような感覚。50代の男性から、この時期とくに多くいただくご相談です。実は、これは体力の衰えではなく、猛暑明け特有の体の状態が重なって起きているケースがほとんどです。今回はその仕組みと、続けられる体づくりについてお話しします。
猛暑明けの「運動再開」で腰の張りが出るのはなぜ?

今年の夏も、外に出るだけで危険を感じるような猛暑が続きました。7月・8月はエアコンの効いた室内で過ごし、通勤以外はほとんど歩かなかった——という方も少なくありません。2か月間ほとんど動かない期間があると、お尻や太もも裏、体幹の筋肉は「使われないモード」に切り替わります。そこに9月、涼しくなった途端のゴルフ18ホールやウォーキング1時間。急にフル稼働を求められた体が、悲鳴を上げるのは無理のないことなのです。
とくにゴルフのスイングは、腰を軸に上半身を大きく捻る動作。本来は股関節と胸の周りが回ってくれることで腰の負担が分散されますが、動かない期間が続くとその2か所が硬くなり、腰だけで捻りを担ってしまうため、腰まわりの張りとして表れます。
東洋医学では、この状態を「気滞(きたい)」「血(けつ)の滞り」として捉えます。気血の流れは動くことで巡り、止まれば澱む。夏のあいだに滞った巡りが戻らないまま急に負荷をかけると、筋肉のこわばりとして表面化しやすいのです。また、腰は「腎(じん)の府」といわれ、体の土台となるエネルギーが宿る場所。猛暑による発汗や睡眠の質の低下で消耗した状態では、腰が支えきれず重だるさを感じやすくなります。痛みの前段階である「重だるさ」は、まさに未病(みびょうち)のサイン。ここで手を打つことが、本格的なぎっくり腰を防ぐ鍵になります。
朝晩の冷えと股関節の硬さが腰にのしかかる

9月に入ると、日中はまだ暑いのに朝晩はぐっと涼しくなります。この気温差が、腰にとってもうひとつの負担になります。東洋医学には「寒(かん)は収引を主る」という考え方があり、冷えは筋肉や血管を縮ませ、巡りを滞らせる性質を持つとされます。半袖のまま夜風に当たったり、明け方に薄い布団で寝ていたりすると、腰やお尻の筋肉が縮こまったまま朝を迎えることになります。
その状態で朝のウォーキングに出れば、ウォーミングアップなしで走り出すのと同じ。腰への負担は跳ね上がります。「朝いちばんが一番つらい」という方が多いのは、この朝晩の冷えが関係していることが少なくありません。
さらに見逃せないのが股関節の硬さです。デスクワークで長時間座り続ける生活では、股関節の前側(腸腰筋)が縮んだ状態で固定されます。すると立ち上がったときに骨盤が前に引っ張られ、腰の反りが強くなる。この姿勢のまま歩いたりスイングしたりすれば、腰の一点に力が集中してしまいます。腰痛の原因が「腰ではなく股関節にある」ケースは、実際とても多いのです。
経絡(けいらく)の視点でも、足の外側から腰・体側を通る「胆経」、内ももから体幹へ向かう「肝経」は、股関節を横切って腰につながります。股関節周囲が硬いと、この流れが滞り、腰の張りとして感じられることがあります。腰だけを揉んでもすぐ戻ってしまう理由は、ここにあります。
ゴルフ・ウォーキングを続けるためのセルフケアと鍼灸の役割
まずご自宅でできることを3つお伝えします。ひとつめは運動前の股関節ほぐし。椅子に座り、片足の足首をもう片方の膝に乗せて軽く前に倒れる。左右30秒ずつで、お尻から股関節の外側がゆるみます。ゴルフ場に着いてからでも、ウォーキング前でも構いません。
ふたつめは腰まわりを冷やさないこと。9月は「暑いけれど朝晩は冷える」季節です。薄手の腹巻きや、夜のうちに一枚羽織るものを枕元に置いておくだけでも、朝の重だるさは変わってきます。入浴も、シャワーだけで済ませず湯船で腰を温めていただきたい時期です。
三つめはツボ。腰の張りには、腰の高さで背骨から指2本外側にある「腎兪(じんゆ)」、お尻の中央のくぼみ付近の「環跳(かんちょう)」、膝裏の中央にある「委中(いちゅう)」がよく用いられます。腎兪はカイロや手のひらで温める、委中は軽く押してゆるめる。強く押しすぎず、心地よい範囲で行ってください。
それでも張りが抜けない、スイングのときだけ違和感が残る——そんなときは鍼灸や整体でのアプローチもご検討ください。当院では腰そのものだけでなく、股関節・お尻・体側の緊張、そして冷えや自律神経の状態まで含めて全身を確認し、鍼・お灸・整体を組み合わせたオーダーメイドの施術で巡りを整えるサポートをしています。運動を「やめる」のではなく「続けられる体に整える」ことが、50代からの体づくりでは何より大切だと考えています。
この記事を書いた人

成谷茂樹(なりや しげき)
はり師・きゅう師・柔道整復師(いずれも国家資格)
はり処 悠禅 院長。自身も自律神経の乱れと不眠を鍼灸で改善した経験から、お一人おひとりに寄り添うオーダーメイド施術を行っています。
まとめ
9月の腰の張りは、猛暑で動かなかった体への急な負荷、朝晩の冷え、股関節の硬さが重なって起こりやすいものです。重だるさは痛みになる前の未病のサイン。股関節をゆるめ、腰を冷やさず、早めに手を当てることが、ぎっくり腰の予防につながります。
はり処 悠禅はJR高円寺駅徒歩1分、22時まで営業の完全個室・完全予約制。ゴルフやお仕事帰りにも立ち寄っていただけます。「病院に行くほどではないけれど気になる」という段階こそ、東洋医学の得意な領域です。まずはお気軽にご相談ください。



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